コレクションと展覧会を通じて西洋美術全般を広く紹介することを活動方針としています。この美術館の原点は、フランス近代の絵画・彫刻を中心とする「松方コレクション」にあります。当館は、この「松方コレクション」を保存・公開するための施設として、1959年に設立されました。
開館以来、多くの方々のご寄贈と、継続的な作品購入により、美術館のコレクションは拡充を続けています。常設展では、中世末期から20世紀半ばまでの絵画・近代彫刻など、コレクションの中の代表的な作品をご覧いただくことができます。また、随時開催される小企画展では、そのつどテーマを設けてコレクションの多様な側面をご紹介します。
当館には絵画や彫刻などの美術作品と同じくらい重要なものがあります。それは美術館の建築そのものです。
1959年に完成した国立西洋美術館本館は、20世紀を代表する建築家のひとりであるル・コルビュジエにより設計されたもので、2016年に世界遺産に登録されました。
この世界に誇る歴史的建造物を後世に伝えていくため、適切な維持・管理を行い、必要な修理などを行っています。
当館は、唯一コレクションの保存修復・保存科学部門を持っている国立の美術館です。美術作品は長い年月の間に不適切な温湿度管理・光や空気の質などの周辺環境・虫などの生物被害や移動時の振動などで経年劣化していきます。あるいは地震などの災害などで損傷することもあるかもしれません。このような作品を取り巻くあらゆる劣化要因からコレクションを守り、未来に受け継ぐために、美術作品の劣化の速度を遅らせる保存修復処置を施したり、来館者のみなさまが安心安全に作品を鑑賞できるよう周辺環境を整えたりする仕事をしています。
子どもから大人までのあらゆる方々に向けて、美術・美術館に親しみ、学びを深め、楽しんでいただくための多くのプログラムを開催しています。学校教育と連携した「スクール・ギャラリートーク」や「先生のための鑑賞プログラム」、家族で親しむ「どようびじゅつ」、週末の「美術トーク」・「建築ツアー」、当館の研究員や国内外の専門家を招いての講演会やシンポジウムなどを実施するほか、小中学生を対象としたセルフ・ガイド、「ジュニア・パスポート」や「アクティビティブック」などの配布も行っています。
各部門でのインターン生受け入れだけでなく、いくつかのプログラムにおいてはボランティア・スタッフと協働することで、さらに開かれた美術館を目指し、さまざまな生涯学習に寄与すべく活動を展開しています。
コレクションを知り、またよりよい展覧会を開催するための基礎となる地道な調査研究活動を行っています。美術史の調査研究は過去から最新の研究まで幅広く情報収集に取り組むことが重要で、そのための専門書など研究資料の収集を行っています。こうして蓄積された研究資料を元に調査や研究を行った成果は常設展や展覧会に反映され、みなさまにご覧いただいています。また、収集した研究資料は当館研究資料センターでの公開を通じて、国内外の研究者などの調査研究に役立てられています。
美術作品の保存・修復に関する調査研究にも力を入れており、美術作品にX線や紫外・赤外線を当てて調査したり、作品に使用されている色材を調べるために科学調査を行ったりしています。これらの成果は美術作品の材料・技法を理解するための研究や修復、保存環境の維持などに役立てられ、コレクションを未来に受け継ぐための一翼を担っています。